ボクの某国論
其の十三 霧のロンドンとは言うが・・・


霧のロンドンと言えばよく聞いたフレーズで 小さい時から英国の首都は霧が多いのか・・ぐらいの知識はあったが 今や“霧の北京”の方がよっぽど有名になってしまった。だが 霧の成分は水分ではなく悪名高いPM2.5! ロンドンの場合 緯度が高い割にメキシコ湾の暖流のお蔭でそれほど寒くない、その代りその暖かい空気に北からの寒風がぶつかった場合 霧が発生しやすく“霧のロンドン”と言われるようになったと学校で教わったように記憶している。でも最近ロンドンは、めったに霧が出ないそうである。そこで霧の原因について 再度調査してみたらなんと産業革命以降 石炭を多く使うようになってからロンドンでの霧の発生率が増えたそうであるので やはり原因は同じPM2.5だった可能性が強いようなのだ。となると「何が霧のロンドンだ・・ただのスモッグじゃないか」となってしまう。

 某国首都 午後3時ぐらい ヘッドライトが必要。

 振り返ってみると 十数年前に某国首都に赴任を命ぜられた私は、特に秋から冬にかけて毎日のように発生する“霧”を不思議に思って暮らしてきた。この霧については、某国の政府関係者や一般人 駐在の長い日本人、誰に聞いても何故発生するのか?霧の成分は?など誰も明確な答えを示せる人がいなかった。会社の同僚なども「どうもゴビ砂漠から飛んでくる細かな粉塵らしいって 皆言ってる・・」本当かよ? 

黄砂の場合 明らかに空が黄色くなるので黄砂ではない・・・本物の霧「水分」なら これだけガスっぽい濃密な霧が発生すれば 車のフロントガラスは濡れ 道路も湿るはず。ところが 洗濯物は、夜洗ったパンツが朝方にはパリパリに乾いているのである。絶対に「水分でできた霧」ではない。では、工場から出たスモッグか・・・もしそうであれば臭いがあるはずだが それもない。第一 これだけのガスが「工場煤煙」なら 苦しくて息もできないはずだ、でも 臭くもないし息苦しくもない。いったいなんだろう・・・この疑問は、この後もずっと持ち続けて 明確な回答を得ることはできなかった。私の運転手君に「あなたの小さい時は、この霧あったの?」ときてみると「子供の頃は、ありません。天気が良ければ青い空でした」とのこと。これはやはり経済発展と何らかの関連があるな・・と思いを強くしていた。私「政府は何か対策考えて無いのかね・・」 運転手君「強い風が吹けば一発で解決します。」 私「・・・・」それじゃ根本的解決にならないジャン!

 おそらく政府の一部専門家は発生元を分っていたはずである・・何故そう考えるか?それは、政府の公式行事や国際的な催し物の時は、政府が対策を打つと途端に青空が回復するからである。 でも 通常は民衆が騒がない限り 問題化する必要もないし 政府も対策に関心が無かったというのが実態だろう。一般大衆も 霧と解釈すれば別に「危険な事態」とは誰も思わないまま過ごしてしまうのである。

 ところが 私と同じ疑問を持った人が他にも沢山いたようなのである、特に関心が高かったのがアメリカ大使館で 本国から機材を持ち込んで独自に調査を始めていた。彼らがやったのは、霧の原因調査ではなく 空気中に漂う汚染粒子の濃度の調査である。直径が2.5マイクロメーター以下の微粒子は、呼吸を通じて肺や脳の毛細血管まで到達するとの事で 濃度が高いと健康に重大な支障が出ると言われている。

PM2.5の「P」は、“微粒子”を指し 「M」は、マイクロメーター(1/1000ミリ)で“単位”を示す。1立米(1?)の中にどのくらいの微粒子が存在するかで “大気汚染指数”が示され警戒情報などが発せられる。ちなみに大気汚染指数が100以下なら ほとんど生活に影響なし。200を超えたら健康に重大な影響がありマスクを着用すること、300を超えたら外出を控えた方が良いとされる。私自身は、赴任の翌年に酷い気管支炎を患った・・が 半年の間、某国の一流病院のどこに行っても治らず 最後は、日本に戻って診てもらい処方された薬を飲み始めたら1週間で完治である。それ以降 某国の病院は当てにしないことにしている。只 それ以降気管支炎の再発はなかったのですっかり忘れていたが あれもPM2.5が原因だったのかもしれない。

  雨や霧ではありません。天津市

 アメリカ大使館は、当初は、細々と注意喚起をしていたが 月に数回、大気汚染指数が500を超える値も出ていて 某国首都の空気汚染は、深刻な状況であることが 少しずつ暴露されるにいたった。最初は、外国人を中心に関心が高まり 日本人学校などは、当初隣のビルが見えない日は、校庭での運動を控える対策を取っていたが アメリカ大使館の調査データが毎日取れるようになって それを基準にし始めた。

 データは、某国市民にも関心が集まり 某国政府の環境保護局も調査結果を公表するようになったが 二者のデータと分析に大きな開きがあり こうした場合某国人民は、某国政府のデータは全く信用しない(笑)、そして空気汚染は社会問題化し始めたのである。某国政府は 外圧による暴露が無ければ 今でもダマ天のまま ほったらかしのままだったろうが いやが上にも対策を取らざるを得なくなった。

 首都某市政府が一番先にやったのが 車両のナンバー規制通行であった。交通規制は、月〜金5日間 毎日末尾2つの番号が順番に乗れなくなった(月曜日は16、火曜日は27、水曜日は、38といった具合)。ところが 金持ちの首都市民は、すぐに違うナンバーの車をもう一台購入し対応、車の数は逆に増えた。

次に市は、車の購入制限と追加した。これで車は、某市「市民戸籍」を持った人しか買えないし 市民でも四半期に一回の抽選で90人に1台しか抽選に当たらない。法人の車購入も納めている税金の額と抽選の運で決まるようになった。車を使う企業にとっては、この上なく不便で問題が多い規制ではあったが 他にいい方法も見いだせなかったのだろう。

こうした市民の自由をも束縛する規制が有効なのか、私は甚だ疑問に感じていたが 日系の大手石油会社現地副社長に聞いたところ「いいえ 案外車規制も有効なのですよ、日本では、ほとんどそんなことやっても意味ないですが こちらは、ガソリン、軽油の精製が悪く 排気ガス内の汚染物質が多量に出るため 空気汚染の実に20%を占めているようなのです」との驚きの解説であった。話がそれるが 某国にディーゼル”乗用車”がほとんどないのは、まともに使える軽油がないのが理由だ。

よってVWの誤魔化し問題もあまり影響なし・・・(大型トラックは、ほとんどディーゼルであるが どんな油でも走るように作ってあるので 品質最悪な軽油もへっちゃら その代り汚染排気バカバカまき散らかすのだ)

さて 車の排気ガス以外 どのような原因があるのだろうか?私は、どう考えても車以外の原因の方が主要ではないかとずっと思い続けていた。ある休暇帰国の日である、首都空港は、首都中心部のかなり北に位置し その北には、山脈が並ぶので 北風の冬場は、山からの風で空気が良い。この日首都空港は、雲一つない快晴であった。飛行機は、北風であれば風の吹く方向に離陸するので 一旦北に向かって離陸した後 今度は、天津の方向、つまり南にUターンして 渤海から朝鮮半島方面に進むのである。天気が良いので 窓際の席から離陸後のきれいな山並みを撮影していた、機体がUターンして南に機首が向くと 地上に見える山と農地から無数の白い煙が発生して風で南に流れている。首都の中心部は、その煙で上空が白くなって 私の乗った飛行機が首都の中心に来るころには、ついに地上が見えないまでに霞んだ。「なんだこりゃ!!これが発生源ではないのか!」これは明らかに 野焼き、山焼き、廃棄物焼却、工場の煙突類からの排煙である。某国では、都市化されていない場所と都市化が進んでも取り残されたスラム街、古い家屋では、まだまだ石炭、練炭、薪が暖房の主力である。都市部も石炭で温めたお湯をパイプで各戸に送っているし 発電も主力は石炭である。冬は、小麦を作り 収穫を終えたら野焼きしてトウモロコシを植える。都市から出る膨大なゴミも焼却される際に煙が発生する。

さて PM2.5の原因を纏めてみよう!

@    石炭、石油発電所の排気煙

A    各地工場の排気煙

B    民家の暖房用、厨房用の石炭、練炭、薪

C    農地の野焼き 農地ゴミ焼却 山焼き

D    都市のゴミ焼却処理

E    建築現場の粉塵 土塵

F    自動車、トラックの排気ガス

G    砂漠化進行による細かい土の微粒子

   この他には、レストランの厨房、露天串焼きバーベキュウの煙もバカにできない。主にこうしたものが 人間生活の中で絶え間なく発生し 沈殿しにくい細かな微粒子が霧のように漂い続けているのである。臭いのないのは、空気に希釈されてすでに臭いの成分が薄れているのと 色々な煤煙が混じっているので 特定の臭いにはなりにくいのではないだろうか。色々な排煙、粉じんから出た細かい微粒子のみが長い間空気中に漂い 白くガスとして見えるのである。

  こうして原因をピックアップしてみると 軍事パレードなどで短期間にこれらを全面ストップさせて 青空を取り戻すことはできても 恒久的な対策は、相当な時間と費用を擁する一大事業であることが分る。某国の大本営発表では、何度も早期解決可能!必ず空気汚染に勝利する!ウンタラカンタラ・・・の繰り返しであるが 状況はますます悪くなる一方である。念仏唱えて解決できるような問題ではないのだよ!

   規模は違うが 60年代の日本も同じ問題を抱え 最終的には解決をしたわけであるから 優秀な某国政府幹部諸氏にできないわけはなかろう! 近平君 あなた一人のせいではないが このままほっておいたら毛沢東時代の「鉄ならぬ竹のカーテンで中が見えません!」ではなく、「ガスのカーテンで某国が全く見えません!」と言う時代が本当に来てしまうよ・・・これも貴方の肩にかかっておるんです、頑張ってよね!!

2015/12/25 記)

HOME