其の十九   偽 物 市 場 
ボクの某国論

私は、腕時計と言うものを付けない。物をすぐ失くしてしまう注意力の無さを自分で認識しているのと 肌が金属アレルギーなので腕時計がつけられない。チタン製であればそれほどでもないが それでも汗をかく夏はダメである。その為 腕時計には全く興味が無い・・ブランドも分らない。

 ところが私の同僚や友人の中には、結構腕時計にこだわる人が多く そう言う人が某国に出張で来ると必ず行くところが 偽物市場である。当該市場は、「偽物市場」とは表示していない。某国の面子が傷付くからである。泥棒が、名刺に”職業=泥棒”と謳わないのと同じと考えたらいい。

でも 皆が知っている、外国人も知っている、警察も知っている「偽物だけを売っている市場」なのである。それも某国首都の所謂銀座3丁目に堂々とビルとして構えているのだ。また 市内各所に同じような市場がたくさん存在する。ビルの中は、ブランド品の洋服、コート、鞄、財布、宝石、煙草、酒 ありとあらゆる商品の偽物が並ぶ ここで言う「偽物」とは、ブランドを偽っているだけで 鞄を買って実は鞄として使えなかった・・・と言う意味ではない。但し 本物のブランド品であれば10年以上使えても ここで買った品は、見かけは同じでも 下手すれば3ヵ月で使い物にならなくなる。皆 ある程度それを分って買っているのである。

もちろん買い方にもそれなりのテクが必要である、特にアラブ系の人が特に折衝がうまいと言われていた。次にロシア系で彼らも徹底して値段を叩いて買っていくらしい。一番の鴨は、日本人だろう。ちょっとまけて貰えばすぐ買っちゃう・・

買い方のコツは、こうだ。グッチの財布が展示されているとしよう・・・私、値段を聞く・・・店員「350元!」・・・聞こえた値段など完全に無視し いきなりドカンと落として  私、「35元なら買うよ!」・・・店員「冗談だろ!」・・・私、「いいよ 売らないなら他を探す」歩き出す・・・店員「ちょっと待った! 200元でどうだ?今日の最低価格!」・・・私 「35元って言ったろ。バイバイ」また歩き出す・・・店員「ちょっと待って あんたに特別価格出す! 120元!どうだ?」・・・私、「じゃ こっちも特別価格出したろ!40元でどうだ」・・・店員「40・・いくつ使ってくれるの?」・・・私「40元なら3つ買ってやるよ」・・・店員「・・・仕方ないな、三つね OK」。これを繰り返せば相場が分ってくる。コツは、色々な店を歩いてみることだ。10倍ぐらい吹き掛けてくる店員が多いから 時間を掛けて叩きまくること。相手も損してまで売らないので 限界点はいずれ見えてくる。

上の事例は、つまり40元でも儲けが出るという事 その分 質はめちゃくちゃ悪いことは、覚悟しておかねばならない。そんな安値で売れるものが質が良いわけないからね・・・ご愛嬌の土産にはもってこいの商品、もちろん上げる相手にも「偽物」で「安物」であることは説明しなければならない。

先進国家の仲間入りとか 大国です!!とか偉そうに言っておいて 首都に偽物市場が あちこちにある、しかも観光名所にもなってしまっている・・・日本なら面子丸つぶれであるが 某国の場合は全然平気 「こんだけ 素晴らしい偽物が創れる」と逆に血気盛んなのである。でも 昔の日本もそう言う時代があったかな・・

 さて WTOにも加盟して 知的財産権も重視すると一応対外的には何度も宣誓した某国政府、政府の面子として取締りを強化したふりが必要である。先ほどの偽物市場ビルも 1415年前は、露天市場形式だったが 当局の取り締まりで「御取り潰し」となることが決まり 跡地には、近代的な商業ビルが建てられることになった。しかし 出来上がったその新しい商業ビルに行ってびっくりした。露天で商売していた連中が皆ビルインして同じ商売をしており 前より豪華な偽物市場が出来上がっていたのだ。何が取締りだ?・・ホント摩訶不思議

 もともと取締る気などなかったのだろうけど 各偽物店個別への虐め(取締り)は、行われているようで 店主はそれなりの対策を講じていた。出張で来た上司や友人を伴ってよく行ったのが 腕時計の偽物店。この世界は、奥が深い!(笑)偽物の中にもさまざまなランクがあり ブランドによっても値段が違う・・・偽ブランドのくせして ブランドで値段が違うってどういうこと?? やはり少量生産の希少(つまり数が出ない)ブランド名の物は、値が高くつく・・・らしい。

 さて 何度も店で偽物を物色して 顔見知りになると 店主の方から「お客さん いい品が入ってますぜ、見ませんか?」と誘いが来る。でもその“いい品”は、その店には置いていない。突然の当局のガザ入れで没収されては困るからである。店主についていくと とあるマンションの一室に案内される。その部屋で見せられたものは、高級ブランドの偽物腕時計がずらりと並んだショーケースであった。腕時計は、品質によって3つぐらいのランキングで値段の差が設定されていた。

@    表面ガラスが上質で傷つかないものを使用、基盤は、韓国製で故障が少ない。

A    表面ガラスは、普通の強化ガラスであるが 基盤は、韓国製。

B    ガラスは、普通ガラス、 基盤は台湾製で韓国製より若干落ちる。

@ぐらいの偽物なら充分510年は使えるらしい。最悪は、ランク外の全て某国製偽物 20元ぐらいでめちゃくちゃ安いが 酷いものは、翌日壊れる。 

私の友人は、感心しながら@の上質品を2個も買ってしまった。1個 250元もする。この時 私もちょっと魔がさして友人が買ったのにつられ 一つ買ってみることにした。偽物市場では、100元以上の物は買ったことが無いのに ここで240元(当時のレートで日本円3600円)も出してしまった。ブランドは、私でも知っているローレッ○○の偽物であったが使う事もなく 机の引き出しの隅で眠ることになった。

 その年 某国には、突然日本のグループ本社から統括社長が来ることになって その準備に追われることになった。某国各地の関連会社から責任者も首都に集合である。社長との会議が予定されていた日 突然社長から「市内を見てみたいので 午前中案内してくれないか?」との要望 私がアテンドをすることになり 運転手を手配して車で各繁華街などを廻って見せた。時間は、厳密にスケジュール化されていたので 普段 腕時計を使わない私も携帯電話の時間表示では心もとない、仕方ないので 例の時計を初めて使うことにした。

午前中の市内見学が終わり 昼飯を社長と二人で取ることに。

 「○○君 君すごい時計しているんだな!!」突然 社長が私の腕を見て言った。しまった!偽物マーケット状況などと言うものをよく知らない社長にどのように説明しようかと迷ったが とりあえず偽物であることを説明した。冷汗が出てしまう・・・

 どうも ロレッ○○のデートナという商品は、本物は、200万円ぐらいするらしい。社長の時計よりはるかに高いから 気まずい感じになるところだった(笑)。

 金属アレルギーのため その時計もそれが最期で使っていない。可哀そうに書棚の工具入れの中で使わないドライバー達と一緒に寝たまま、やはり私にとっては、240元分の価値しかなかったようである。

                                   (2016317日記)

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