Nan Yuan Air Base
北京の市街地の南に1つの空軍基地がある。仕事で近くまで行っても めったに飛行機が飛んでいるのを見ることは無いが、れっきとした空軍基地である。場所は、第四環状道路と第5環状道路の間で南側にある。この地域は大興区と言う区域に属し 北京でも所得水準の低い田舎町であるが、今回 北京市民の注目を浴びる事になる。それは、フランスのアクロバット飛行チーム バトルイユ・ド・フランスが 極東ツアーの一環で この基地においてデモフライトをすることになったからである。
 2004年10月初旬 友人のUni氏から北京にPdFが、アジアツアーの一環として 10月10日に北京でデモフライトをする旨のメールをいただいた。しかし この手の情報が中々事前に入らない某国のことである、また一部関係者だけの公開で 新聞には後日記事だけが掲載され悔しい思いをするのかと 半分は諦めていた。10月6日、こちらは国慶節の休みで その日私は所用でタクシーを拾い会社に向かっていた。その日の運転手は やたらに愛想がよく世間話に花を咲かせていた所 運転手「まぁ 新聞でも読みますか?」と私の手元に読み終わった新聞を渡した。何気なく新聞に目を通すと 何と!!・・・明日10/7に南苑基地で デモフライトするとあるではないか・・・でも本当か?運転手に一般人も入れるのかと聞いてみると「あぁ、入れるって書いてあるよ、どうも10/5に来て 一度飛んでるらしい、明日は10時から飛ぶみたいだ」と。
よし!ダメ元で明日行ってみよう。中に入られなくても 外から見られるし基地の雰囲気を少しでも感じられればそれでも良し・・会社の運転手に朝6時半に迎えに来てもらうよう携帯で連絡、その他情報を掻き集めるよう要請した。(2004/10/11 記))
さてさて 翌日10月7日は、朝から霧の強いいやな天気である。太陽は見えても 霧でかすんでいると言う北京特有の空模様、この霧には出張で天津に赴く時はよく泣かされる・・・高速道路が閉鎖されるのだ。しかし 昼前に消えてくれることもまれにありそれを期待して出かけることとした。運転手君 事前によく調べてくれており 「今日は、入場券が無いとは入れないそうです」・・・「しかも 入場券は150元から2800元(約日本円50000円)まであるそうです。」・・・「また 基地周辺の道路は、デモフライト前に 規制がかけられ 駐車証が無いと基地周辺の道路への乗り入りができないそうです」・・・・・
うむ よく調べてくれたが、悪いニュースばかりでないの・・・もう!・・・それで入場券とやらは何処で売ってるの? 「わかりましぇ〜ん!」・・・トホホ
 暗いニュースばかりであるが、こんな機会でも無いと基地周辺を探索するチャンスも無い とりあえず行ってみよう。と言うことにした。しかし 2800元とは軍もあくどい商売するものだ。
 我々は車と飛ばし まず軍の正門まで行くことにした。正門に着くと 正門横の壁に”本日のフライトは、午後2時に延期”と汚い紙になぶり書きしてあった。正門の兵士に今日の入場券は何処で売っているのか聞いてみると 「あそこの売店」と正門横のタバコ販売店みたいな小汚い小屋を指差した。早速 その店に入ってみる。一人の老人が「あんたら 切符ほしいの?あるよ、でも380元のしか残ってないな・・」 駐車券は何処で手に入れるの? 「あぁ〜駐車券かい 4枚入場券買ったら1枚プレゼント・・・」 バカヤローそんな高い券4枚も買えるか!と心の中で叫んでいると 運転手君曰く「おじちゃん そんな事言わないで 2枚買うから 頂戴よ・・・」 おじちゃん「まぁ いいか、そんならあげるよ」・・・何と言うやり取りだ。決め事はあっても 交渉しだい。こんなところが中国らしい、またまた 難問クリアーである。入場券と駐車券があれば もう特権を得たも同然である。ただただ時間の経過を待つのみとなった。しかし まだ8時にもなっていないこの田舎町で どうやって時間つぶしのよ・・・もう!我々は町をうろちょろ走り回りケンタッキーで朝食を取り  さらに近くのサウナ風呂兼カラオケルームを見つけ営業時間外と断られるも 強引に入れてもらって昼過ぎまで時間をすごした。何でも交渉しだいである。ちなみに私の運転手君 まったく日本語はできないので 会話は北京語であるが、最近では交渉ごとを私がする所を見て「中国人と変わらないね」と評価する・・・嬉しくは無いが。
Wings
本音で言うと フランスのアクロバットチームには、あまり関心は無い。要は中国空軍機の方に興味があるのだ。その為 今回は、こんなに張り切っている。昼過ぎにサウナを出た我々は、南ゲートに向かった、既にすごい渋滞である、ランウェイエンドは出店まで出でいた。駐車券の無い車はこの道は入れないはずでしょ???何の道路規制もかかっていない、そこも中国らしい。渋滞を乗り切ってゲートまで漸くたどり着く ここからは”この紋所が見えんか!”とばかり駐車券をかざしてゲートを通過 基地内の無舗装の仮設駐車場に乗り入れる。そこの先には臨時の金属探知ゲートが並べてあり 今度は人の渋滞である。14時 検札ゲート開放 親切な女性空軍兵士のボディチェックを受け中に入る。エプロンまでは相当ありそうであるが、Tu-145などが列線を並べ撮れそうな雰囲気であった。
エプロンまでは、普段民間空港では見ることのできないツポレフ製の旅客機が、10機ほど並んでいた。これらは、空軍第34航空師団102連隊に所属していると考えられている輸送用の航空機であり ボディの塗装は民間航空会社”中国聯航”となっているが 完全に空軍の傘下にある機体で 人員輸送を担当している。南苑空軍基地は、この他にカナダ製のカナディア RJ 200ERなどが確認されている。私も仕事中に確認できた機種は、TU-145MとRJ-200ERで フライトしている姿を見ているが この基地は戦闘機の運用基地ではなく 輸送機部隊の基地であり北京市郊外に少なくとも3箇所はこうした機能の基地があることは確認できた。北にある昌平の空軍基地も同様の機能を持った基地らしい。
基地に入る際 一番気にしたのは、カメラの持込が可能かどうかだったが、これは訪れた一般人が皆関心を持っていたことで 私の周りの人も空軍の兵士に盛んに この点を確認していたが、問題ないようだった。ただし 私のように小さいながら300oレンズを持ち込んだらチェックを受けるかと思いきや まったく問題なし。私はここに赴任する際 わざわざ小型の300oを購入して持参したが 何と白レンズ付きの立派なカメラを持ち込む人もいて 某国の都市部の人々の生活レベルは確実に欧米並みに近づいている。こうなったら 私も堂々と撮影しようと決意 1キロ以上先にあるエプロンまで歩く間に これらの機体を一機一機カメラに収めていった。ポプラの林の間からは、下の写真のような機体An-2も見ることができた。
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また 基地内で様々な作業用の車両を見ることができたが、台湾の空軍が使っている車両などと比較するなどして興味は、つき無い。車両ナンバーに”NY"とついているのは、多分”南苑”の頭文字をとったものだろう。当日は、市内でもあちこちで見かける武装警察の車両も多く見られた彼らは、武警の頭文字をとった”WJ”を使っている。基地内で見られたこれらの車両は、完全な国産のものもあれば 外国企業と合弁で設立した国内メーカーのものもある。
Patrouille de France
Tu-154などの列線を左に見ながらエプロンまでひたすら歩いて 漸くエプロンにたどり着いた。すでにタキシーウェイのロープ際は、多くの人が張り付いていた。我々は、飲料水と弁当を基地内で買って そこにあった隙間を確保したが、肝心のチームの姿は、何処のも見えない。そう言えば150元から2800元のチケットまで あるんだったよな・・・一体ここはどのチケットの場所なのだろうか?まったくその辺の表示が無い。兵士に聞いてみると 380元のエリアは、もっとチームに近い場所でさらに歩かねばならない場所らしい。我々の前のタクシーウェイを転がってくれるなら 別に移動することも無いが 風向きも判らず何の確証も無い とりあえずチームに元近い場所に移動しようと言うことで 再び歩き始めた。380元の場所は、さらに1Km程先で 再び金属探知ゲートと手荷物検査である・・・ここで先ほど買った飲料水を没収された。(某国ではペットボトルは、民間空港でも持ち込み制限が厳しい)たどり着くとチームの列線よりさらに奥に来ており 左手に彼らを望むことができた。VIPエリアは、もう一つの金属探知ゲートを設け3重の規制がかかっていた。380元のエリアはもう人がいっぱいでロープ際には入る隙間も無い。しかしここで待つことにした。
 1時間ほど待っただろうか 霧は一向に消えない。真上の空はうっすら青い、上空は確実に晴れているのに地上にたち込める霧は、水平の視界を妨げる。これでは演技は難しいだろうと思っていたら 突然放送で「本日は天候の為 遺憾ながらフライト中止、料金は、明日販売所で返金します」とあった。皆 観客一同から落胆のため息である。一斉に民族の大移動が起こり始め 帰り支度である。しかし 私の仕事はここから始まるのである。
フランス空軍のアクロバットチーム「パトルイユ・ド・フランス」は、10月開幕した「フランス文化年」の目玉イベントの一つとしてアジア巡回公演を行ったもの。1931に結成され50年以上の歴史を誇るフランスの「空中儀兵隊」である「パトルイユ・ド・フランス」は、今回初めてシラク大統領と共に某国に訪れた。チームは北京の後、武漢、珠海、香港を巡回した。
搭乗機がほんとにこいつでなくて良かった・・・これで移動する人民解放軍の兵士には気の毒だが こいつは写真撮影の対象にはいいが 乗るものじゃない
さてさて 人が帰り始めたらチームにできるだけ近づいて撮影をしよう・・せっかく来たのだから。と言う事で今まで入れなかったロープ際も人がまばらになり チームを見ることができた。何枚か撮影して場所を変えることにする、VIPエリアからも人が帰り始め 警備の人ももう仕事が終了したかの様子で ゲートは、通過できそうな様子であった。ちょっとチャレンジしてみようと言うことで VIPエリアの金属ゲートの通過を試みた。思った通りゲートの兵士は何もチェックせず、我々は、VIPエリアに入り撮影を続行。どうも2800元のチケットの席もここのようだが、2800元も払う価値はまったく感じられない。チームの列線の正面ではあるが チームまでの距離はかなり離れており ウォークダウンなどは、よく見えない位置である。ただ格好の良い椅子と花壇が綺麗なだけ・・・・わたしも一通りの撮影を終え帰宅の途に向かった。
 チームは、10月11日に晴天の中最後のフライトを終え 次の公演地武漢に向かった。
このページこれで終わるつもりだったのだが 再び南苑基地訪れる機会が生まれた。2007年10月私は某国人の友人と某国の最西部シルクロードの果てにある新疆ウィグル自治区を旅することにしたが 友人からもらった航空券を見ると出発の便は何と北京南苑空港となっているではないか しかも中国聯邦航空である。「おいおい 俺達は旧ソ連製のTu-154で 新疆まで3時間の旅をするのか?あんなボロ飛行機に乗ったら 落ちないだけ運がいいぞ!」某国人の彼は大丈夫 きっと新しい機体だよ」とこっちの話も気にしない。もし 前回見た軍ご用達のTu-154であれば 仕方ない、これも経験と乗るしかない、半分覚悟を決めた。行きで落ちなければ 帰りは中国国際航空の機体だし 北京空港だし 問題ないだろう。再びタクシーで前回の空軍ゲートを抜け 民間ターミナルエリアへ向かう。ここは軍民両用空港なのだ。ターミナルに付く手前で 現役の某国空軍機を発見 また引退した航空機も見つけた為 ターミナルで待ち時間があるのを利用して 撮影を試みる。何せ 生きている中国空軍機を撮れればそれは私にとっても貴重な体験となる。ターミナルから歩いて 撮影を仕様としたら機体には1名づつ衛兵が付いているではないか 何と今日はポケットデジカメしか持って来ていない。300oとイオスキッスを持参していれば 充分射程距離にあるのに・・・・仕方ないので わざと見える道路わきから空軍機の撮影を1枚撮ったところで 衛兵に見られ「写真を撮るな」と恫喝を受けた。久々の緊張である。脇においてある引退した中国民航の輸送機は誰もいないので 堂々と撮影。さっさとターミナルへ引き返した。搭乗時間が迫ると 民間ターミナル前は、さっきまで何もいなかったのに 15分の間に3機ものB-737が下りてきた。その内2機はウイングレッドをつけた新しい機体である。いずれも中国聯邦航空の新鋭機で 私のさっきまでの心配は吹き飛んでしまった。「なんだ この航空会社も新鋭機持ってるじゃん」友人曰く「だから 新しい飛行機だって行っただろう・・」私「お前 飛行機のこと何にも知らないで悠長なやつだな、旧ソ連製の旅客機はよく落ちるんだぜ」と言ってやったが 彼の頭にはこれから行く新疆ウィグル自治区の旅のことしかない。足掛け6日間の旅を終えて 昨日帰宅したが 今でもTu-154でなくて良かったとほっとしている。乗り心地の良いB-737が南苑基地を離陸する祭 以前離着陸を目にしたA-300改造型の電子偵察機がエプロンに置いてあるのが見えた。イオスキッスを持ってきてれば撮れたのに・・・悔やんでも後悔後に立たずである。(Oct. 2007)
南苑空港のターミナルビル 最近整備されたようで 新しい建物である。
HOME
(Control Tower)
資料によると TU-145Mは、B4001〜4004、4014〜4017、4022〜4024、4027〜4029、4050〜4051の計18機を保有しているようだ。
今回の公演のシンボルマーク、万里の長城とチームカラーをデザインしたもの。チームは北京市郊外の司馬台長城(万里の長城の名所の1つ)で10月11日午前中に長城を背景に撮影フライトをした。
アントノフAn-何とか.言ったっけ ロシア製旧ソ連製の軍用機は興味なかったので 知識が無いのよ、でもよくテレビでも出てくる現役軍用機です。
民間機音痴の私は、この航空会社がB-737を所有している事すら知らなかった。