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1998年10月 オシアナ海軍基地へ行った私は、展示機エリアに数機の特殊作戦用ヘリが展示されているのに気が付いた。アメリカ陸軍内に特殊部隊が存在して特製のヘリを運用していることは知っていたが、まさか海軍基地でお目に掛かるとは思わなかった。その機体は、やたらと黒い塗料で塗られており、夕日を浴びても、翌朝早朝の強い朝日を浴びても、光を殆ど反射していない。要はどう撮っても真っ黒なのである。黒いMH-47Eは、朝日を浴びると反射していたが、MH-60と思われる黒いブラックホークとその近くに展示されていたOH-58カイオワの黒さは際立っていた。それらの機体はアメリカ陸軍第160特殊作戦航空連隊 ナイトストーカーの所属機であった。
究極の黒色と言うのは、イギリスの物理学研究所で開発されたカーボンナノチューブで立てた形で構成されるベンタブラック(Vantablack)とい言う物質があるが、光を99.9%吸収してしまうため これを塗料に使うと光を当てても殆ど反射しない。日本でも光吸収率99.2の「黒色無双」と言う塗料を開発して販売されているが、恐らくこの系統の塗料で塗られているのだ。闇夜では探照灯を当てても反射しないので、発見が難しい。
第160特殊作戦航空連隊ナイトストーカーズは、オサマビンラディン殺害の作戦で全世界にその名を知らしめた部隊である。歴史あるアメリカ陸軍航空部隊第101空挺師団から枝分かれした部隊で、カーター大統領時代の1980年、在イランアメリカ大使館からの人質救出作戦の失敗を契機に設立、アメリカ陸軍が海空軍/海兵隊に頼らず独自に展開できる特殊部隊を創った訳である。映画「ブラックホークダウン」でも出てきたソマリア内戦モガディッシュでの悲惨な戦いも彼らの部隊である。(2023年6月 記)
↑ ドアガンの取り付け部、此処に付けられるのはM-134等のミニガンが多い。展示してあるロープは、ラぺリング用より太い感じなので「ファストロープ」と言われる器具を使わず、手足だけでヘリから降下するときに使われるロープであろう。
↑ 写真を10倍明るくして加工するとシリアルらし記番号「26189」と読める数字が・・・エンジンカバーの「189」と合わせて、この機体がUH-60L/89-26189ではないかと判断した。空中給油装置を付加された際の改造でMH-60になった機体だと思う。
↑ さてリバーサルフィルムで撮影に際、周りの情景が明るく飛ぶのを覚悟で、撮影感度を上げて撮ったのがこの写真で、エンジンカバーの{189」と言うのがこの機体のシリアルの一部のはずである。
↑ 2000年10月のオシアナ航空ショーにも展示された第160特殊作戦航空連隊のUH-60L。1998年展示に比べ黒の深みはにそれ程でもないが、やはりその黒さは展示の中で目立つ存在だった。尾部上部に付いている怪しいアンテナも追加され2個になっていた。
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← 写真を加工で10倍以上明るくすると 尾翼に書かれた文字のみがうっすりと現れた。何となく「26286」と読める。生産されたUH-60でこの番号に相当するのは、第160特殊作戦第3大隊所属(3-160 SOAR(CBT)のUH-60L/90-26286である。UH-60Lの一部は、MH-60Lに改造され空中給油装置を付けたそうなので、この機体がそうなのかもしれない。
↑ 翌朝、早朝7時過ぎの朝日が眩しい時間、他の機体は朝日を浴びて輝いていたが、この機体だけは真っ黒である。
↑ 光吸収率99%以上で塗装されているらしく、近くで見ても黒い影になる。光を反射しているのはグラス部分のみ。