F-117 Page

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第49戦闘航空団の隊長指定機になっていた843号機、この843号機は、最後に生産されたF-117の最終号機である。

長年ヨーロッパの火薬庫と言われたバルカン半島でユーゴスラビアからの独立を目指すコソボでの紛争過激化した頃の話である。
 1999年3月27日 アメリカ空軍 第47戦闘航空団のパイロット デール・ゼリコ大尉(Dale Zelko)は、8機のF-117Aステルス戦闘機と共にユーゴスラビア周辺の爆撃任務を命じられた。8人のパイロットの中で唯一湾岸戦争の経験があった彼には、その日の目標の中で対空火器の密集度が高く任務遂行が一番難しい場所 ベオグラード市周辺の軍事施設をあてがわれた。彼のF-117A(82-806)のコールサインは、「ヴェガ31」。その日は、ゼリコの娘の誕生日であったので任務をさっさと終らせ 基地に戻り次第娘に電話をする予定だった。

イタリアのアビアノ空軍基地を基地を飛び立った8機のF-117Aは、それぞれ違う目標へ向かった。ゼリコのF-117Aは、防空体制の厳重なベオグラードへ侵入するためアビアノから北回りのコースをとって再びバルカン半島を南下して進入するルートで飛行した。彼には爆撃経験が何度もあり F-117の操作にも慣れていたが、この晩は所々で雷が光る真っ黒な闇夜を目標に向かっている時 いやな予感にさいなまれた。「今日は何かやばい気がする・・・」

しばらくしてF-117Aのレーダーは目標をとらえ 2発のレーザー誘導爆弾を投下 目標は予定どおり破壊された。それから数秒後 突然2発の対空ミサイルが彼のF-117に向かってきた。1発目は、機体の上空通過 だが2発目は正確に彼の機体に向かって飛んでくる。「これは、避けきれない!!」と思った瞬間 ミサイルは、左翼に命中して機体は大破し墜落、彼は、射出座席を操作して何とか脱出した。世界で初めて実戦配備されたステルス機F-117は、レーダーに映らないとされ 湾岸戦争でもレーダーに感知されずに爆撃を成功させたが ここにきてついに撃墜されてしまったのだ。ステルス機が落とされたことにショックは大きかったが、米空軍は早速HH-60 2機とHH-53 1機のコンバットレスキュー隊を出動させ ゼリコの救助に向かわせた。レスキュー隊の隊長は、ジム・カルドーソ(Jim Cardoso) ゼリコを捕えようと必死の捜索をする敵地のど真ん中に向かってヘリを飛ばす。米軍は、A-10を護衛の為6機上空待機させ 万全を期した。

 ゼリコは、レスキュー隊の努力により何とか敵の手を逃れて救助されたが 墜落したF-117は、バラバラになった機体はすべて回収され詳細に調査されたようで ロシアや中国にも一部部品が流れたとされる。この時 機体の一部に木材も使われていることが公になって西側ではそんな事も注目された。F-117Aを撃墜したのは、ミサイル部隊のベテランでセルビア軍対空ユニットの隊長 ゾハダン・ダニ大佐(Zoltan Dani) 彼は、その前にアメリカ空軍 第555中隊のF-16Cも撃墜しており SA-3 Goaで初のステルス機の撃墜も果たし 一時英雄として政権の宣伝にも利用された。その後 軍に疑問を持ち、早期退役して今はパン屋を経営しているそうだが、十数年後に撃墜されたゼリコ(退役時 中佐)が彼の家を訪ね 今でも親しく交流が続いているそうである。(2019/3 記)
 

F-117は、2008年に引退しているが、しばらくは、30機単位で飛行可能な状態で保管されていたという。そして 10年が経過した2018年7月には、トノパのテストレンジで2機のF-117が離陸して行く映像を外部のマニアに撮られていることから まだ何らかの研究材料として使われているらしいのだ。最後までミステリアスな機体である。

ステルス技術の最初の発想者はソ連の科学者だそうだが、 結局この技術が理論の域を脱して研究が進み 実用戦闘機にまで仕上げで 実戦に使ったのは、結局アメリカ空軍である。日本人が最初に考案し イギリスで技術がj花開いた船舶のフィンスタビライザーのようなもので 良い理論でも 実際に金を出して研究を進め 実用化されるまでには 良き理解者と多くの資金が必要なのである。

ベオグラード近郊でのF-117被撃墜事案は、ステルス機も不死身ではないことの証明になってしまった。要は、レーダーに映りにくいが 映らないというわけではなく 技術と経験を持っている防空ベテラン担当にとって それほど発見が困難なことではないことが一般にも知れることになる。F-117が実戦配備された頃には、アメリカ空軍ではF-117Aのようにレーダー波を分散して反射させる方法は限界があるとして レーダーを反射しない技術の開発に進んでいた。

Wings

誘導路をこちらに向かってタキシングするF-117A、思ったよりかなり大型の機体であった。