(1972~1993)
VF-2と共にF-14Aの最初の飛行隊の栄光を背負ってデビューしたのが、海軍第一戦闘機中隊(VF-1 ウルフパック・・群狼 飛行隊)である。私自身はこの部隊の写真を撮ったことがないので、ページの作成もで出来ないままで20年以上経過してしまった。しかし、友人から提供いただいた写真があるのに、こんなに有名かつF-14の代表的な飛行隊のページを作らない訳にもいかない。そこで最近作成したイラストと共にご紹介していくことにした。
撮影の機会には恵まれなかったが、実は1980年3月サンディエゴからフリーウェイを南下してユマに向かう途中 彼らの雄姿はこの目に焼き付いている。海岸線を走るフリーウェイはNASミラマーのランウェイの先端を南北に抜けており、我々がそこを通過した時に丁度4機のF-14Aがオーバーヘッドして行った。車のフロントガラス越しに見えたその機影が正に4機編隊のウルフパック達であったが、当時のVF-1は鮮やかなフルマーキングで大変美しかった。私は車を止めて撮影するという機転もきかず、見送ってそのままユマに向かって進みチャンスを逃した為、その後一度も撮影のチャンスの恵まれることもなく、彼らは1993年解散していった。(2019/3 記)
F-4ファントムが全盛時代、各飛行隊はそれぞれのスコードロンカラ―で身を包み、どれもこれも興味深いマーキングの世界だった。そんな中でF-14Aのデビューを飾るVF-1とVF-2のマーキングは当然注目されることになる。新進気鋭の女優が、初の記者会見でどんなドレスを身に纏うかと言う位、興味をそそることであっただろう。その期待に応え初の実戦部隊としてデビューした2つの飛行隊のマーキングは、正に見事な装いと言えるもので、それから後に続く新しいF-14の各飛行隊に対しデザインの面で大きな影響を及ぼした。
最上段のF-14の塗装と比べ異なる点は、機首のコックピット付近をモヒカンのようにグロスブラックで塗った事である。尾翼に書いていた艦名は、後に翼の前縁に書かれるようになり、代わりに「WOLF PACK」の文字が入るようになった。VF-1の塗装例でもっとも美しいとされるパターンである。
VF-1は、VF-2と共に飛行隊ナンバーから米海軍航空隊で一番古い戦闘機部隊を継承しているものと勘違いしてしまうが、実はそうではない。海軍航空隊の各飛行隊は、創設以来大きな再編を繰り返してきた為、飛行ナンバーと名称その他伝統などを継承して、最も古いとされる戦闘機中隊は、VF-14のトップハッターズとVF-31トムキャッターズと2つの飛行隊である。1972年に創設されたVF-1とVF-2は、実のところ1920年代に海軍が初めての空母を運用するために作られた当時の戦闘機中隊との関連性は殆ど無いのである。
1972年に第2次大戦後消えていた飛行ナンバーを復活させ、最新鋭F-14Aの飛行隊を当時唯一の原子力空母エンタープライズに載せた。これはアメリカが当時世界に誇る最新技術の結晶と言う意味でも、米海軍の軍事力の最先端の象徴としてデビューを演出したのである。その為 中隊ナンバー1番と2番を復活させた。
VF-1 ウルフパック・・・F-14Aの赤い狼のマーキングは、グラマン社(現 グラマン・ノースロップ社)のデザイナーであったジョージ・M・カヒオー氏(George
M Kehew)によって考案されたもので 双尾翼と胴体にそれぞれ書き込まれた狼の頭は、編隊を組めば正に”群狼”に見える素晴らしいデザインと言える。ちなみに2018年時点で94歳の現役デザイナーとしてまだ活躍されている。
VF-1 NE-103、この機体 サイドワインダーミサイルを使いイラク軍のMil-8ヘリコプターを撃墜した機体でイラストではわかりにくいが コックピット横に ヘリのシルエットが書かれている。
群狼については、空軍の8th TFWの項でも記述しているので 内容の重複を避け角度を変えて記述したい。狼は群れで行動するというが、たいていの場合ボスとその妻 そして彼らの子供たちの集りで「家族」で群れを構成している場合が多い。ただし 20頭以上の群れになるとよそ者を受け入れる場合があるそうだ。長い間、人間に殺戮されてきたため、今や繁殖できるのは人間と共存しない家畜のいない世界・・・野生動物だけの厳しい大自然だ。当然ながら群れで力を合わせないと狩れる動物も限られる。狩は、イングランドのキツネ狩りと同じで獲物が疲れ果てるまで追いかけ 体力を消耗しきったところでとどめを刺す。
群狼のすごいところは、ボスが脱落者を出さないよう移動時も陣形を組んだチーム行動であるところだ。体力の弱った者に歩調を合わせ 先頭部としんがりに力の強い者を配置して ボスは最後尾で群れを統制する。正に軍隊の移動姿である。
狼は、実際に人間を襲うことなどほとんどないのだが、家畜を襲う際人間の裏をかく頭の良さが恨みを助長させる原因となり 保護地で繁殖してせっかく増えると罪もないのにすぐに駆除の声が上がる。
海軍では部隊の士気高揚の為、飛行隊の中で2機だけは既定の範囲内でカラーマーキングが許されていたが、1990年代に復活したのがこれである。VF-1の当初のマーキングをできるだけ踏襲しようとしたが、胴体のラインは、オリジナルのものより細いものとなっている。
VF VA の ”V”って 何に?・・・
アメリカ海軍・海兵隊機について興味がある方は、海軍航空隊の部隊ナンバーにVF,VA、VAQ、VP、VC VMFA、など頭に”V”の文字が入っていることをご存じだろうが このVが何を意味しているか知っている方は意外に少ないのではないだろうか。私も若いころずっとこの疑問を抱え先輩方にも聞いてみたが、皆さん見解が違い、分らずじまいでいた。実は、この”V”は、「空気より重い飛行物体」を表しているのだ。つまり「Heaviar
Than Air」のHeavyの”V”なのである。この説明を聞いたとき、最初は、ピンとこなかったが、考えてみれば飛行機より先に軍隊が利用したのは空気より軽い気球であり、そして飛行船であった訳だ。これらを偵察や爆撃に使ったのが空の利用の先駆けであり、飛行機はそれらの後に続く兵器であった。Heaviar
Than Airは、すなわち空気より重い物体が空を飛ぶ、つまり飛行機を指すのである。VBは爆撃機、VTは雷撃機、VFは戦闘機となる。
データが無いのだが、恐らく1978年9月頃の写真である。NK-106も9月に飛来しており、このNK-100は同時期に嘉手納基地にも飛来してマニアを歓喜させた。
嘉手納基地を離陸する為,R/W23でタキシングするVF-1のF-14A、パイロットのヘルメットにもウルフヘッドのシールが張り付けてある。