子供の頃、学校で漢字の由来を習ったと思う。日本の教育は、嘘を教える事が少ないので“どこぞの国”のように「全て我が国で発明されたものなんだよ~」等とは唱えず、漢字もちゃんと漢の国から伝わった文字である事を教え、象形文字のように形から由来したり、一文字一文字が意味を持っていることを習った。ご存知の通り、ひらがな、カタカナも漢字の一部を変化させたりして作った文字なので、大陸から漢字が伝わらなかったら文化の習得も大いに遅れてしまったであろう。

 日本人は縄文時代
1万年も独自の文化を維持してきたのに、独自の文字を作ることはなかった。しかし、中国から一旦漢字が輸入されると、それを独自に発展させて独特の言語体系を形成したのである。江戸時代から明治に至っては、欧米文化の取り込みにスピードを上げたので、外来語も多数駆使することになる。日本語における外来語は、聞こえたこの発音に出来るだけ近いカタカナをあてて使うので非常に便利であった。その反面、某国では「スウィッチ」を「開関」、「センター」は「中心」と単語の意味を意識した漢字をあてるが、人名や固有名詞等はそれ自体に意味がない場合が多く、発音に近い漢字がない場合がある。そんな時、発音が近い字という観点を離れ、熟語の組み合わせが良い字や見栄えの良い字を当て嵌めようとする。その結果、本来の発音を殆ど無視して漢字の意味を重視するので、尚更本来の発音からかけ離れてしまう。

 例えばドイツの車メーカーの商標である「
BMW」は、英語発音“ビーエムダブリュ”から近い「宝馬」と表記する。発音は“バオマー”となるが、車メーカーにとっては発音よりイメージ重視である訳だ。その点、日本人は出身国に敬意を払い、ドイツ語オリジナルの発音に近い“ベームベー”と呼ぶことが多い。これも文化の違いであろう。カタカナは、比較的本来の発音に近い表現ができる。こうした便利な応用術は日本人の大の得意とするものである。

 ハンバーガーチェーンの「McDonald’s」・・・中国では、「麦当労」と書くが発音は“マイダンラオ”となり、本来の発音と大きく異なる。英語での発音をカタカナに充てれば「マクダーネル」となり、より英語の発音に近くなる。ちなみに日本でこの商標を“マクドナルド”としたのは、商売上覚えてもらい易い名前にしたかったが為で、故意に本来の発音から外しているのであり、ちょっと発想が某国的ではある。それが証拠に航空機メーカーだった「マグダネル・ダグラス社」は、「マクドナルド・ダグラス社」とは呼ばれない(笑)。上海の日本料理屋で遭った米国人営業マンとウマが合い名刺を交換したら、漢字名に“麦当労“と書かれていて笑ってしまった。彼のラストネームは、Mr. McDonald だった。彼も半分ジョークでこの名刺を使っている様だったが、この名刺のお蔭で某国企業相手に飛び込めるらしい。

 
 話が大分逸れてしまったが、4世紀後半に大陸から伝来した漢字を独自に文化に取り入れ1500年も使い続けてきたが、江戸時代末期から明治にかけて欧米の列国に肩を並べる為、激しい勢いで学術などを吸収するようになって困ったのが、医学書、哲学書等の英文、独文、仏文に出て来る単語に当てはまる漢字が無いことである。そこで当時の江戸や日本各地の学者達は、漢字を駆使して独特の“日本式新熟語“を作っていったのである。

  それは、ネットでも検索できるので コピペさせていただくと以下のような漢字である。 

  あいうえお順で

亜鉛、暗示、意訳、演出、温度、概算、概念、概略、会談、会話、回収、改訂
解放、科学、化学、化膿、拡散、歌劇、仮定、活躍、関係、幹線、幹部、観点、
間接、寒帯、議員、議院、議会、企業、喜劇、基準、基地、擬人法、帰納、義務、
客観、教育学、教科書、教養、協会、協定、共産主義、共鳴、強制、業務、
金婚式、金牌、金融、銀行、銀婚式、銀幕、緊張、空間、組合、軍国主義、警察、
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化粧品、下水道、決算、権威、原子、原則、原理、現役、現金、現実、元素、建築、
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出口、手続、取消、内服、日程、場合、場所、備品、広場、服務、不景気、方針、
明確、流感


 . 形容詞+名詞
人権 金庫 特権 哲学 表像 美学 背景 化石 戦線 環境 芸術 医学 入場券 分類表

B.副詞+動詞
互恵 独占 交流 高圧 特許 否定 肯定 表決 歓送 仲裁 妄想 見習 假死
C.同義語の複合
解放 供給 説明 方法 共同 主義 階級 公開 共和 希望 法律 活動 命令 知識 総合 説教 教授 解剖 闘争

 D.動詞+客語
断交 脱党 動員 失踪 投票 休戦 作戦 投資 投機 抗議 規範 動議 処刑
E.上述の語による複合語

社会主義 自由主義 治外法権 土木工程 工芸美術 自然科学 自然淘汰 攻守同盟 防空演習 政治経済学 唯物史観 動脈硬化 神経衰弱 財団法人 国際公法 経済恐慌

 また熟語そのものは伝統的中国語にすでに存在していたが、日本において欧米の語彙の翻訳用語とし新たな意味を与えられたものは下の通りだそうだ。

 胃潰瘍(周礼)、医学(旧唐書)、意義、階級、綱領、労働(三国志)、意識、
 専売(北斎書)、遺伝、右翼、教授、共和、経費、交通、左翼、主義、侵略、生産、
 天主、博士、輸入(史記)、印象(大集経)、衛生(荘子)、演習。

まだまだあるのだが、書き切れないので省略する。もうお分かりのように、現在某国社会の中で使われている熟語漢字の70%近くは、日本人が江戸時代末期から明治、大正、昭和を経て欧米文化を吸収する上で作成され、意味を与えられた和声漢字熟語なのである。
 某国社会も近代化の過程で
4世紀の日本が行ったように、他国のものを取り入れて社会を発展させてきたのだから柔軟性の面では引けを取らないが、辛亥革命から改革開放までの期間、欧米列強や日本などに追いつく為に、独自の熟語を作成している時間的な余裕などなかったのかもしれない。

しかし、自分たちが和声熟語の世界に充分浸っている事実は、某国の教育課程では一切教えられていない。もちろん多くの人が留学する現在、ある程度教養のある人はその事実をしっかり掌握しているが、一般大衆は知らない人が殆どである。それどころか、最近の旅行ブームで「日本に行ったら、我々の漢字が使われていたよ!なんでだ・・?」なんて、無教養丸出しの某国人すら存在する。

それはそうでしょ・・某国政府も政治に日本批判を利用し撒くってきたから、正しい事実を今更言えないんだよな・・・これらの熟語が敵性国家日本製なんて・・
だって、国名である”○○人民共和国”、○○以外は全部和製熟語。何処にでも書かれている革命・共産・主義・社会・平等・公平・解放・労働・覇権・階級・領空・・・みんな和製熟語である。歴史を掘り返すのが好きな某国だってこういう歴史を今更掘り返したくはないのである。清の時代に戻るならいざ知らず、現代社会において和製熟語なしでは簡単な政治的な標語すらできないのだから。




                                   (2016年11月30日記)
                                                      (2016年11月30日記)

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其の二十二  漢字文化の逆輸入