ベトナム戦での教訓を基に作られたAC-130は、A型~E型~H型と次第に強力な武装を強化して行った。左旋回しながら円を描くように地上を射撃するので、攻撃に隙間が無く敵に逃げる余裕を与えない。写真の右手の四角い穴は、M-61 20mmバルカン砲を取り付ける部分である。黒い半球のものは、AVQ-19
レーダー目標距離測定器。また、機首の下い付いてる長細いものは、恐らくAN/ALQ-87 電波妨害装置だと思う。20mm弾は、何と8000発収容できるとある。
↑ 左側面後方に付いた105mm(Howitzer)砲は、1972年から採用された米軍機に付けられた最大口径の砲。その右隣はボフォース社の40mm機関砲である。丸い膨らみは、射撃用の目標追尾レーダーだ。何故 このような大口径の方が付けられたかは、ベトナム戦に置いて地上の37mm対空火器で数機のAC-130Aが撃墜されたため、地上対空砲火の届かない高い高度からアウトレンジ射撃できるようにしたものである。
↑ 2機目に来たのは、AC-130H / 69-6575。1機目は雲の陰りになったが、2機目は日が差した。しかし、我々3人ともAC-130Hが2機来るとは予想もしていなかった為、この位置で撮影するのが精一杯。ガンが並んでいる右側面に逆光覚悟で突進する時間はなかった。私は2機目の方が緊張して撮ったせいか、ぶれた写真となった。AC-130A、E、H、各型は、スペクターの愛称を持つ。
1977年3月 海兵隊のVMA-214 ブラックシープの嘉手納基地での訓練を狙って沖縄入りした私。この年3月の沖縄はかなり冷え込んで、天候が悪いと気温が下がり風邪をひいてしまった。最初の1週間は旅行費を節約する為、ホテルではなく父の友人が運営するアパートを間借りして,そこからバスで嘉手納まで通った。那覇市内から毎日出かけるのも遠いため、途中から嘉手納市内の安いホテルを紹介してもらい、そこを拠点に活動を始めたが、何とその宿はラブホテルで、客の多くは若い男女。でも、写真撮影でき来た客も泊めてくれるので、多くの航空マニアが宿泊代を節約する為、男2人で、酷い時は3人で一部屋を利用していた。部屋のベッドはもちろんダブルベッド一つである(笑)。廊下でばったり男女カップルと鉢合わせになれば、気まずい思いをするのはこちらだ。こっちは男2人だ、冷たい視線に誤解されているなぁ・・と、何時も恥ずかしい思いをした。
VMA-214の項でも記述したが、そのホテルを利用されていた航空マニアのお二人と懇意になり、撮影を暫く共にさせて頂いた。一人は今や世界的な航空写真家のT・K氏。もう一人が航空専門誌の編集長をされているM・I氏だった。
我々3人は、嘉手納基地R/W05の国道で着陸してくる軍用機を撮っていたが、丁度朝鮮半島では1976年から始まった米韓合同演習チームスピリッツ78が行われていて、それに参加する外来機の嘉手納立ち寄りも期待出来たのだった。しかし、数日前にハンビーで海兵隊のヘリを撮っていて、大物の外来であったバーモント州空軍のRB-57を逃した私はすっかり傷心して、外来機の再来など全く頭にもなかった。只、降りてくる機体だけは撮り逃がすことが無いよう、着陸機は全てファインダーに収めようと心掛けていた。
F-5EのDACTも終わり、R/W-05エンドで暫くまったりする時間があった。T・K氏からアメリカでの軍用機撮影事情、最近M・I氏と行かれたフィリピン・クラーク基地の話など、歩道に座り込んで話を伺いながら時間が流れて行った。そんな時に小さくC-130の機影が見えてきた。我々は、R/W-05
rightの順光撮影位置に陣取っていたので、Left側に降りてくるC-130はかなりダッシュしないと撮れない。彼ら二人はC-130はスルーするようだった。そこで私一人で05-leftまで走り、このC-130にレンズを向けたのだったが、暗いグレー色と機首に長いピトー管のようなものを付けているので、MC-130の一種かなぁ?
ぐらいの感覚で撮影を終え、彼らの所に戻った。するとT・K氏が「今の撮った? くそー!失敗した。AC-130Hだよ、今降りたのは」と盛んに悔しがっている。アメリカで数々の軍用機を撮りまくってきたT・K氏が、撮り損なってこれだけ悔しがる「AC-130H」とは何ものなんだ?。私はAC-130の詳しい知識もなく、彼の解説をに耳を傾けた。そこにもう1機 ランディングしてくるC-130の機影が現れた。今度は3人とも猛ダッシュでポイントに向かい、何とか撮影は出来た。しかし、この機体は左側面が撮れないと、価値が半減してしまう事を後から教わった。2機のAC-130Hは、着陸後暫くして朝鮮半島に向かって飛び立っていったが、その後ろ姿には、左側面に突き出た105mm/40mm各砲が見えた。(2022年11月 記)
↑ 1977年3月 チームスピリッツ78に参加する為、途中で嘉手納基地に立ち寄った16th SOSのAC-130H/69-6574。フロリダ州のハーバード・フィールド空軍基地からの飛来である。AC-130Hとは知らない私は、変わったC-130だな・・ぐらいの軽い気持ちでシャッターを切っていた。
AC-130H / 69-6574 "Iron Maiden"
AC-130H / 69-6572 ”Grave Digger”
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AC-130H / 69-6575 "Wicked Wanda"
AC-130には、操縦士以外これらのシステムと火器を運用するために火器管制士官、電子戦士官、4名の砲手とロードマスターと赤外線装置オペレーター等の下士官が乗っている。国籍マーク横の扉には
目標を照射するAVQ-17サーチライトが入っている。
右側面は一見して何の変哲もないC-130に見えるが、左側には悪魔の顔を持つ空軍の地上攻撃機である。